1)学校検診の意義
学校歯科健診では、一般的には歯及び口腔の疾病及び異常、特に齲歯、歯周疾患、不正咬合その他の疾病及び異常について検査します。学校健診は、短時間で多くの生徒さんの口の中を検査します。歯並びや、歯肉の状態、大きな虫歯の有無はわかりますが、歯の間の初期の虫歯を見つけるのは大変難しいです。従って、かかりつけの歯医者さんで詳しく検査してもらうと、「他にも虫歯がありますね」と言われる可能性はあります。逆に、健診で虫歯として指摘されたけれど、歯科医院ではがんばれば、進行をとめられる可能性があり、このまま治療せずに経過観察して行きましょうと言われる場合も有ります。ではなぜ学校健診を行うのでしょうか?という疑問も出てきます。
一つは、虫歯の有無などを定期的にチェックすることで、早期治療に結び付けることができます。また、放置されている大きな虫歯等が見のがされることはまずありませんので、早期発見ではありませんが、それ以上の進行を食い止めることはできると思います。
もう一つの意義としては、学校、区市町村、または国単位での健診結果を集計・分析して、現在の子どもたちがどのような虫歯やお口の状態に有るかを把握し、これからの行政の対応を決める資料になります。では、健診で虫歯を指摘されたらどうしたらいいのでしょうか?まず用紙をもらったら用紙をよく見てできるだけ早く受診しましょう。
2)学校検診でもらう紙のチェックポイント(一部解説の順番が用紙と異なります)
① 虫歯があると言われたら
学校健診で虫歯の指摘をうけ、まず用紙をもらったら用紙をよく見てみましょう。
まず、虫歯の本数をチェックしましょう。
小さなお子さんではおうちの方が 乳歯残根・第一大臼歯虫歯 チェックをお願いします。親が見るのを嫌がるようになったら本人に鏡を使わせて虫歯の状態をチェックしましょう。
だいたいどの虫歯の事を言われたのか見当がつくと思います。大きな虫歯が見つかった時には、急いでかかりつけの歯医者さんに連絡をとりましょう。もし、どこに虫歯があるかわからないようであればそれほど大きな虫歯ではないはずです。あまり急がなくても大丈夫ですが、痛みなどの症状がなくても歯科医院で詳しく検査をしてもらうことをお勧めします。
健診で虫歯の指摘を受けても、生え変わりの時期が近い乳歯は処置をせずに観察の対象になる時もありますし、永久歯の虫歯でも小さなものは急いで治療をせずきちんと清掃をすることで現状を維持し進行をとめることができることもあります。かかりつけの歯医者さんとよく相談して治療方針をお決めになることをお勧めします。
また、健診で指摘を受けていなくても、歯科医院でレントゲン検査等を使って詳しく見てもらうと歯の間などの隠れた虫歯が発見されることがあります。歯の間の虫歯は外から見えなくても大きくなっていることがあります。出来れば、学校健診からおおよそ半年ぐらい経ってから一度かかりつけの先生の点検をお受けになることをお勧めします。
・歯科健診時の虫歯に関する(C、CO、△、×、○等)用語の説明
今お子さんを育てている方の子供時代にも、もちろんあったと思いますが、虫歯の状態のチェックです。学校によって記載方法がちがうことがありますが、乳歯、永久歯ともにチェックします。
C(シー)…ただちに処置を要するもの。Cは、英語で「骨が壊れる」という意味の単語 caries を略したものです。
○(マル)…虫歯治療が完全に終わっている歯
CO(シーオー)…気をつけないと、むし歯になりそうな可能性の歯。でも、うまく管理できると、進行が止められる
可能性のある歯
初診時 → 7年後

△…永久歯の喪失歯
×…要注意乳歯(抜歯か保存の適否を慎重に考慮する必要がある乳歯)
② 要注意乳歯と言われたら
これは、永久歯との生え変わりが近くて、ぐらぐらしていたり、歯茎の色がピンクに透けて見えていたり、あるいはもう横から永久歯が生え始めていたりする歯のことです。要するに、生えかわりの仕方がちょっと心配な乳歯、そろそろ抜いた方がいいと思われる乳歯のことです。最近は、永久歯の歯並に影響しているような乳歯、レントゲン検査が必要な乳歯も要注意乳歯としてチェックしています。
特に永久歯が見えているのに乳歯が残っているような時には、自分で抜くのは難しいことが多いです。無理をせず歯科医院で抜いてもらった方がいいでしょう。あまり強い力で無理矢理抜こうとすると、乳歯の根が少し残ってしまったりすることもあります。少し動かしてみて、全然動いていないような時は早めに受診して下さい。
中には、そのままひとりでに抜けるまで放っておいても大丈夫なこともありますが、取りあえず、一度かかりつけの歯科医院で見てもらう方がよいかと思います。健診の時期と紙をもらった時期が離れていると、歯科を受診した時にはもう抜けているという事もありますが一度点検をお受けになることをお勧めします。
③ 歯みがきが不十分ですと言われたら
健診では前歯の歯の汚れ(歯垢)の着きぐあいをチェックします。
健診でのチェック基準
歯の汚れ(歯垢)を三段階に評価をします。染めだしはしませんが、染めだした写真で比較してみましょう。
0 ・・・ ほとんど付着なし
1 ・・・ 若干の付着有あり
2 ・・・ 相当の付着がある
歯垢1 のケース 歯垢2のケース

歯みがきが不十分ですと言われたら、歯磨きのママチェックをお願いします。
④ 歯肉に炎症が有ると言われたら
『まだ子どもなのに歯肉が腫れていると指摘されました。そういうこともあるのでしょうか?』小学生なのに歯肉に炎症が有ると言われる場合もあります。歯肉炎の有無もチェックします。
大人の歯槽膿漏のような重症なものはまずありませんが、歯ブラシがゆきとどかない状態が長く続いている場合が多い様です。また、歯並びのでこぼこが原因で上手に磨くことができずにいることもあります。
健診でのチェック基準
歯肉(歯ぐき)
0 ・・・ 異常なし
1 ・・・ 定期的な観察が必要
2 ・・・ 専門医(歯科医師)による診断が必要
GO…歯垢と歯肉の状態を総合的に判断して、歯肉に軽度の炎症が認められているが、歯石沈着は認められず、本人の注意深いブラッシングを行うことによって炎症症候が消退するような歯肉の保有者
G…歯垢と歯肉の状態を総合的に判断して、歯科医による診断と治療が必要な場合
歯肉炎1 歯肉炎2

小学生の場合
小学生で歯肉の状態が悪いと言われると、『子どもなのにまさか!?』と思われる方が多いのではないでしょうか?
大人の方のいわゆる歯槽膿漏のような重症なものはまず見られませんが、歯肉の状態があまり良くないお子さんをみかけます。多くの場合は、あまり歯ブラシが上手にできていないようです。下の前歯の裏側に歯石がついていることが多いです。また、歯並びの凸凹があるお子さんは、どうしてもへこんでいるところの状態が良くないように思います。時々チェックしてください。かかりつけの歯科医院で相談していただければ、上手な歯ブラシの仕方を教えてもらえます。歯石がついている場合はきれいに清掃してもらいましょう。お子さんの歯肉の炎症は、きちんと歯ブラシすれば比較的短期間で治ってしまいます。私の校医をさせていただいている小学校では2・4・6年生に歯磨き指導を行っています。
中学生の場合
子どもの虫歯は少しずつ減少してきています。しかし、小さい頃はおうちの方に仕上げ磨きをしてもらい、小学校の頃は言われた通りきちんと磨いてきて虫歯の少なかったお子様が、中学くらいからすっかり歯ブラシをしなくなって、虫歯を作ってしまうこともあります。けれども、もう小さい子どもではありません。自分で納得しなければ、毎日の習慣として歯ブラシを続けることは難しくなります。しかし、ここでしっかりした習慣を身につけないと、将来早い時期に歯槽膿漏になってしまう可能性があります。本人も若い内に入れ歯を使うようにはなりたくはないはずです。中学生の歯肉の炎症が指摘された場合には、かかりつけの歯科医院で先生に、歯磨きの大切さをよく話してもらいましょう。歯肉の汚れがどんな結果につながるかを、まず、本人に理解してもらうことが必要です。
⑤歯並びが悪いと言われたら
学校健診でも、歯並びの状態のチェックを行います。歯並びには色々な症状の不調和があります。本人も、おうちの方も気付いてなくても歯科健診で初めて気付くことがあります。まず用紙をもらったらまず、かみ合わせを見てみましょう。
今まで気にしていなかった場合、少しショックかもしれませんが、多くの場合は何らかの歯並びの不調和があるはずです。
分かりやすい不調和である「受け口」「乱ぐい歯」の場合には、早くから気にしている方が多いので、お知らせの紙で指摘をうけると「ああ、やっぱり」という気持ちになるようです。一方、あまり気にしていないことが多いケースは
「上の歯がでている」=『上顎前突』・ 「上下の前歯がきちんと噛んでいない」=『開咬』があります。
これらの場合には健診のお知らせで初めて知る方がいらっしゃるようです。
虫歯などの指摘を同時に受けている時には、まず、かかりつけの歯科医院で虫歯治療の際に御相談になるとよろしいでしょう。早めに矯正を始めた方がよいという診断であれば、矯正治療専門医などの御紹介をいただけると思います。急ぐ必要がない場合には、定期検診をお受けになりその都度、噛み合わせをチェックしていただくことをお勧めします。
歯並び以外に指摘がない場合でも、できるだけ早くかかりつけの先生にご相談されることをお勧めします。
かかりつけの先生がない場合は当サイトの矯正歯科の項をお調べになり、矯正治療を受けられる医院をお探しください。
・学校健診で不正咬合と言われた場合の不正咬合の種類とは
不正咬合の種類は大きく分けると4つに分けられます。
A.八重歯、乱交歯(叢生)
顎が小さいために歯が生える場所が足りなくなって起こります。歯がデコボコして生えたり、犬歯が本来生えてくる場所から外れたところから生えてくるもので、日本人には大変多い症状です。
B.出っ歯(上顎前突)
上顎や歯が前に出ている。上顎そのものが前に出すぎているような場合には早く治療を始めることが大切です。

一般的に上下の差が8ミリメートル以上をいいます。
C.受け口(下顎前突)
三歯以上噛み合わせが普通と逆で、下の歯が外側、上の歯が内側になっている。下顎が大きくて前に出ている場合もあります。

ご両親のどちらかが受け口だったり、遺伝的に下顎がのび過ぎている場合には、顎の成長が終わる十代後半まで治療が必要な時もあります。
D.開咬
口を閉じても前歯や横の歯が上下で噛み合わない。物が噛み切れない場合もある。発音が不明瞭になる。(「さしすせそ」などの摩擦音が特にしにくく英語の場合などはとくに大きなハンディとなります。)
前歯の開きが6ミリメートル以上の場合は要注意です。
八重歯、出っ歯、受け口等の噛み合わせの悪いものは、すべて矯正治療の対象となります。悪い歯並びにはこの他にもいろいろ種類があり、複雑にいろいろな症状が一緒になっている場合もあります。
不正咬合は、口腔内の自浄作用の低下につながり、虫歯、歯周病(歯槽膿漏)の原因となるだけでなく、噛む力の片寄りが顎の骨に不自然に伝わり頭痛を起こしたり、噛む力の低下により顎の関節に痛みを覚える「若年性顎関節症」といわれる疾病にまで発展する恐れもあります。しかも、不正咬合になると食べ物をよく噛めなくなり、胃に負担がかかり、消化も悪くなります。その他に、歯がじゃまをして口が開けにくくなるため発音にも影響を与え、心理的には、悪い歯並びを気にして非社交的にもなります。矯正治療を始められる方の多くは、審美的要素を重要視されます。しかし、機能の回復も重要なポイントで、本来持つべき咀嚼、発音の機能を回復させなければなりません。
例えば上顎前突の場合、つまり出っ歯の方はどうしても下唇が上の歯の下に出ますからHの発音がFになります。開咬の方は噛んでも前歯が閉じないのでSの発音がTHに。下顎前突は通常、舌の位置が前方あるいは下にありますので、独特の甘えた声になります。このように、発音障害の多くは、歯列と密接な関係を持ち、それら悪い部分を矯正することで正しい発音が得られるようになります。不正咬合が引き起こす、身体的・精神的な問題点、そしてそれを改善する矯正の必要をご理解いただけたでしょうか。
健診でのチェック基準
歯ならび・かみ合わせ・あごの状態
0 ・・・ 異常なし
1 ・・・ 定期的な観察が必要
2 ・・・ 専門医(歯科医師)による診断が必要
歯並びの状態1
歯並びの状態2

・口腔の検査に当たっては、お口の中だけでなく、顎、顔面の全体、口唇、口角、舌、舌小帯、口蓋、その他口腔粘膜等の異常についても注意しております。健診をさせていただき、子供たちの歯並びの悪い・悪くなる可能性の多いお子様が年々多くなっているのではないかと思います。私が最近増えていると心配しているのは下の写真のように咬み合わせが偏位(いがんでいる)しているお子様です。

その他の注意するケース
過剰歯 癒合歯 エナメル質形成不全 14歳多発性虫歯
上唇小帯異常 舌小帯異常

7)早期発見・早期治療について
早期発見、早期治療というのは良く聞く言葉でしょう。
その疾患の種類によって意義は違ってきますが、歯科の場合、早く見つけて治すことでそれ以上の進行を止められる場合が多く見られます。進行してしまった虫歯、「神経」に届いているような深さのもの、さらに進んで歯茎が化膿してしまったような場合、治療の期間も長くかかります。中には抜かなければならないことも有ります。もう少し早く来てくれていればと、内心思うこともあります。一方では、、虫歯になりはじめたばかりの時には、歯科医師の管理・指導の元に丁寧な管理をすることで、削ったりせずにそのままの状態を維持できる事もあります。最近コマーシャルなどでも聞く、再石灰化を期待すると言う事です。すべての病気にはこの早期発見・早期治療もっとも大切です。
健診で紙をもらったら、上手に健診の結果を利用して、大切なお子様の成長発育・健康維持のために役立てて下さい。
そして、できるだけ早く受診してください。